警察官を目指す女性にとって、警察学校は「厳しい」「つらい」「怖い」というイメージがあるかもしれません。
ネットでも「地獄」や「体育会系過ぎる」などのパワーワードが目立ちます。
しかし実際の警察学校は、ただつらい場所というわけではありません。
厳しい規律や訓練がある一方、自己成長できる場所であり、信頼できる仲間と出会える場所でもあります。
私が警察学校に入校したのは約13年前で、現在とは多少違うところもあると思いますが、女性ならではの不安や事前にチェックしておきたいポイントは今でも変わりません。
この記事では、警察学校でのリアルな生活や心構えについて、元女性警察官の視点から解説します。
読み終えるころには、漠然とした不安がかなり解消されるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
警察学校とは?入校期間や目的を解説

警察学校とは、新人警察官が必ず入るところです。
各都道府県の警察官採用試験に合格した後、警察学校に入校し、初任科生と呼ばれます。
警察学校は各都道府県によって運営されており、教官は現役の警察官もしくは嘱託された民間人です。
まずは、なんのために警察学校に入るのか、入校する期間や授業内容などを解説していきます。
警察学校に入る目的
警察学校に入る目的は「現場に出る前に、警察官としての基礎を身につけること」です。
一般人からしたら、警察官の制服を着ている人は全て警察官に見えます。「まだ新人だから」は一切通用しません。
警察学校では、以下の項目を充実させるために、綿密な学習プログラムが決められています。
- 法律の知識
- 規律や規範
- 被疑者の制圧
- 体力向上
- メンタル強化
これらの能力を育てるため、教官はわざと厳しくします。私も未だに教官は怖いです。教官も数年で異動するので、同じ配属場所になったときは内心「まじかよ・・・」と思いました。
警察官になりたいという人は、ぜひドラマ「教場」を見てください。多少のフィクションはありますが、かなりリアルに近いと思います。
学校は厳しいですが、警察学校より現場のほうが100倍つらいです。警察学校で根を上げていてはいけません。現場で折れないよう、教官は心を鬼にして本気で教えてくれます。
入校期間
警察学校への入校期間は採用区分によって異なります。
- 大卒区分:6か月
- 高卒区分:10か月
多くの都道府県が上記の入校期間を定めています。
警察学校は全寮制で、土日しか自宅に帰れません。また、最初の1か月は休日であっても帰宅できません。
最初の1か月が鬼門です。ホームシックになる人もいますが、ここを突破できればなんとかなります。
授業内容
授業は座学と術科に分かれています。
座学では主に、刑法や刑事訴訟法などの法律、警察活動の基礎知識、司法書類の作成方法などを学びます。
また定期的にテストがあり、赤点を取ったら補修や再テストです。
覚える量も膨大で、法律関係の勉強をしたことがない人にとってはつらいですが、1から教えてもらえるので心配はいりません。
術科の授業では、柔道や剣道、逮捕術、拳銃などの訓練を行います。
柔道や剣道もほとんどが初心者ばかりなので、問題ありません。その道のプロが教えてくれます。
技術を磨くことも大切ですが、柔剣道ではメンタル面を鍛えることも目的の一つです。
拳銃の取扱いは厳格な規定があるので、拳銃の使用条件や使用方法などをみっちり教え込まれます。
警察学校がつらいと言われる理由

警察学校はつらいと言われます。その理由を3つ解説します。
- 集団生活がつらい
- 術科訓練がつらい
- 教官と先輩がこわい
それぞれ見ていきましょう。
集団生活がつらい
全寮制なので、慣れるまでの最初の1か月は特につらいです。
また警察学校では集団行動が重視されます。誰かが問題を起こしたり、規則違反をした場合は連帯責任です。
私が経験した連帯責任は、
- 数百回の腕立て伏せ
- 数時間の貸与品の捜索
- 外出禁止
- 走り込み
などです。これは覚えている範囲ですが、大体どの都道府県も同じような感じだと思います。
「誰かがミスをしたら全員が罰を受ける」ので、ミスを受けないように、全員が全員のために行動しなければなりません。これが集団生活です。
また個人のスペースは限られているので、プライバシーはほぼありません。
毎日が目まぐるしく過ぎていくので、プライバシーに気をつかっている余裕もなくなります。
術科訓練がつらい
術科訓練とは主に、柔道や剣道、逮捕術、拳銃訓練を指します。
これらの授業は元機動隊員や現役機動隊員が教えに来てくれることがあるのですが、シンプルに地獄です。
私は剣道を選択していたのですが、剣道の特別訓練員である機動隊員が超絶怖くて厳しくて、武道場のドアを開けて機動隊員がいたときは毎回絶望していました。
また、毎朝起きたらランニングです。私たちは毎朝8キロコースでした。
私はランニングが大嫌いなので「今日は剣道にならないかなぁ」とか「筋トレにならないかなぁ」と思っていました。
ランニングが終わったら掃除や朝食、その後に座学になりますが、つまらない授業のときは眠気との戦いになります。
誰かが寝たら全員で走り込みです。
教官と先輩がこわい
教官の言うことは絶対です。
地方公務員法に「上司の命令に従う義務がある」と書かれているとおり、教官は上司なので、どんなに理不尽なことであっても従わなければなりません。
そもそも逆らえる存在ではありません。
私も、今では完全にパワハラと言われるようなことも経験しました。現在はないと思いますが、このときの私は「とんでもないところに来てしまった」と冷や汗ダラダラでした。
また入校期間中に、先輩が入校してくることがあります。
先輩たちは現場を経験しているので、初任科生にとって憧れの存在です。
気さくに話しかけてくれる人もいましたが、先輩方も初任科生には厳しくするようにと言われているので、基本的には怖い人ばかりでした。
女性の警察学校生活はどんな感じ?1日の流れと生活環境

警察学校での生活はとにかく忙しいです。
地域によって違いはありますが、私が入校していた警察学校のスケジュールをご紹介します。
1日の流れ
1日の流れは以下のとおりです。
- 6:00 起床
- 6:10 ランニング
- 7:20 掃除
- 7:50 朝食
- 8:40 授業
- 11:30 昼食
- 12:50 授業
- 17:10 授業終了
- 17:30 掃除
- 18:00 夕食・自由時間
- 22:00 点呼
- 23:00 就寝
主にこのようなスケジュールになります。
ここで注意することが、夕食後の自由時間です。自由時間といっても、課題や実習、掃除が入ってきます。
定期的に教官による両室点検や物品点検も行われます。
給料をもらいながら生活するので、怠惰な生活は許されません。
女性寮のルール
女性寮は男子禁制です。これは逆も然りで、男性寮に女性は入れません。
オートロックになっているので、そもそも入れません。
女性しかいないので、仲良くなりやすい一方、人間関係で悩むことも多くあります。
いじめはありませんでしたが、合わない性格の人はいるので、愚痴を言ったり言われたりします。
訓練や実習でペアを組むこともあるので、性格が合わないと思う人でも、どうにか協力しなければいけません。警察官の仕事は1人ではできません。教官にも協調性の部分を見られています。
女性限定|生理の悩み
生理のときの訓練はどうするの?と思う人もいるかもしれませんが、基本的に生理だから訓練しないということはありません。
寝込んでしまうほど重い人は考慮されるかもしれませんが、生理であろうとなかろうと、男性と同じメニューをこなします。
これは現場に出たときのことを考えると、わかりやすいかもしれません。
「今日は生理なので現場にいけません」なんて言う人がいたら、周りは「は?何言ってるの?」となります。
現場は待ってくれませんし、相談者や被害者の立場からしたら生理なんて関係ありません。
警察は男性社会なので、生理について理解してくれる人は少ないです。生理が重くて悩んでいる人は、病院にかかる、女性の教官に相談するなどして対処しましょう。
警察学校の給料はいくら?

警察学校に入ったら、あなたは警察官です。
地域によって差がありますが、約16〜20万円の給料が与えられ、そこから税金や寮費などの必要経費が引かれます。
私の手取りは約12万円でした。私は高卒後すぐに警察官になったので、1番低い等級です。
大卒や中途採用の人はもう少し高い給料が支払われます。
警視庁公式ホームページでは初任給が30万円と記載されていますが、これは給与総額だと思うので、実際の手取りはもっと低いでしょう。
警察学校で辞める女性は多い?向いている人・向いていない人
警察学校で辞める人は一定数います。警察学校での生活で警察官に向いている人、向いていない人が選別されると思ってください。
辞める理由
辞める理由で多いのが、
- 集団生活が合わない
- 人間関係の悩み
- 理想と現実のギャップ
- メンタル面
などです。
体力がないから辞めるという人はあまりいませんでした。訓練では体力をつける目的もありますが、それよりもメンタル面を強化する目的があります。
向いている人の特徴
警察学校の生活に向いているのは、次のようなタイプの人です。
- 努力できる人
- 集団生活が苦ではない人
- 気持ちの切り替えが早い人
- 人の役に立てる仕事をしたい人
これら全てを網羅する必要はありません。
警察学校では、一般的な会社や学校では経験できないことが学べます。これを機に、自己成長に繋げられるように生活していきましょう。
入校前にチェックしておくべきこと

入校前にチェックしておくべきポイントを挙げます。
- 毎日のランニング
- 早寝早起きの習慣
- 清潔感のある髪型や服装
それぞれ見ていきましょう。
毎日のランニング
警察学校では、ほぼ毎日ランニングがあります。
体力試験に合格したからといって安心していると、入校後のメニューの多さに体がついていかず、最初の1週間でヘトヘトになってしまいがちです。
とくに女性は体力差を感じやすいため、入校前から
- 30分くらいのランニング
- 軽い筋トレ
を取り入れると、授業や訓練がグッと楽になるでしょう。
また、女性だからやらないという訓練はありません。犯人は、相手が女性の警察官だからといって手加減はしません。むしろ弱い女性のほうに向かってきます。
早いうちから運動に慣れて体力向上に努めましょう。
早寝早起きの習慣
警察学校は、毎朝の点呼・洗面・掃除など、動き出しがとにかく早いです。
夜更かし習慣のまま入ると、朝起きるだけで体力を消耗してしまいます。
- 23時には就寝
- 6時ころに起床
といったリズムを作っておくと、入校後に体がスムーズに馴染みやすいので、規則正しい生活を心がけましょう。
清潔感のある髪型や服装
警察学校では、髪型にも厳しいルールがあります。
「耳にかからない長さ」「肩より長い場合は結ぶ」など、都道府県によって細かく決められています。
入校前に自分の都道府県のルールを確認し、
- 前髪の長さ
- 結んだときのまとまりやすさ
などをチェックしておきましょう。
また服装もチェックされます。
基本的に校外学習や自宅の帰宅するとき、学校へ戻るときはスーツを着用します。
このときスーツがヨレヨレだったり、センタープレスがなかったりするのはNGです。これは制服も同じで、だらしない格好を一般人に見られてはいけません。
アイロンを駆使してピシッとした服装を心がけましょう。
警察学校を乗り越えるコツ

つらいことが多い警察学校ですが、コツを知っておくと精神的な負担が減ります。
乗り越えるための3つのコツを紹介します。
- 同期生との絆を大切にする
- 怒られても引きずらない
- 完璧を目指さない
これらを意識すると、つらい学校生活も耐えることができますよ。
同期生との絆を大切にする
警察学校の同期生は、つらいことや悩みを分かち合える特別な存在です。
同じ目標に向かい、同じ教官に怒られ、訓練で汗を流す。そんな毎日を過ごすからこそ、強い絆が生まれます。
学校生活や訓練など、今まで経験したことがないことばかりで悩むこともありますし、愚痴をこぼしたくなることもあります。
生活する中で「もう無理かも」と思うこともあります。それを助けてくれるのが同期生です。
人間なので合う合わないはありますが、かけがえのない仲間になるので、思いやりを持って生活しましょう。
怒られても引きずらない
警察学校で怒られない人はいません。教官や先輩から厳しく叱責されることもあるでしょう。
なぜ怒られたのか、振り替る必要はありますが、引きずる必要はありません。
同期生に愚痴を聞いてもらったり、家族や友達と話して気持ちを切り替えたりして、溜め込まないように意識してください。
警察学校にいるのは、ほとんどが未経験者です。できないのが当たり前なので、自分を責め過ぎないようにしましょう。
完璧を目指さない
警察学校の生活の中で、完璧である必要はありません。むしろ、成長目覚ましいほうが好まれます。
できない自分を受け入れて、少しずつ積み重ねていくことが成長につながるので、等身大の自分でいることが大切です。
同期生の中には、スポーツ経験者や柔剣道の有段者、法律系の大学出身の人もいます。周りと比べることも大切ですが、比べ過ぎないようにしましょう。
比較し続けるとメンタルにダメージを受けるので、入校当初より成長していれば大丈夫です。
まとめ|警察学校は確かに厳しい。でも乗り越えられる!

警察学校は「怖い場所」ではなく、 警察官としての基礎を身につけるための場所 です。
毎日忙しく、慣れるまでは大変ですが、女性でも乗り越えられます。
- 不安なのはみんな同じ
- 集団生活に慣れれば楽しくなる
- 生理・体力面も想像ほど心配いらない
- 卒業すれば、現場で活躍する自信につながる
怖いと感じるのは、知らないことが多いからです。でも同期生は全員同じ素人なので、気にする必要はありません。
この記事を通して少しでも不安が減り、あなたが前向きに警察官の道を目指せることを願っています。





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