警察という組織は、一般的な職場と比べても上下関係が強く、閉鎖的で、飲み会文化もいまだに根強く残っています。
そんな環境の中で働く女性警察官にとって、同僚や上司からのセクハラ発言に悩むことは珍しいことではありません。
特に10代後半〜20代の若い女性警察官は、「新人だから」「空気を壊したくない」という思いから、嫌な発言や下ネタを受け流してしまいがちです。
私自身も13年間の勤務経験の中でセクハラ発言をされたことも、聞いたこともあります。当時は笑って受け流していましたが、セクハラで悩んでいる同僚を見てきました。
今は昔よりも声を上げやすい仕組みが作られてきています。
この記事では、現場で起こりやすいセクハラの実態から「実際にどう向き合えばいいのか」まで、元女性警察官としての経験を交えてお伝えします。
あなたが少しでも働きやすくなるきっかけになれば幸いです。
警察組織で起こりやすいセクハラの実態

警察と聞くと、バリバリの体育会系で厳しい規律があるというイメージがあります。この組織は職員を含めると非常に大きな組織です。
多くの人間が集まると必ず問題が起こります。その一つがセクハラです。
特に若い女性警察官に対して、冗談めいたセクハラ発言をしてくる男性もいます。
飲み会での「軽い冗談」がセクハラに
警察では飲み会が頻繁に行われます。家族や友達に仕事の話はできないので、内部の人間で集まり、ストレス発散しがちです。
飲み会の場は気が緩みがちなので、不適切な発言が出やすくなります。特に若い女性警察官は下ネタやセクハラ発言のターゲットになりやすいです。
発言している当人は冗談のつもりですが、完全にセクハラになっていることもあります。
しかし他の参加者が笑って流してしまうので、言われたほうは「自分が考えすぎ?」と我慢しがちです。
飲み会では階級が上の人から話しかけられると断りづらいですし、距離感が近すぎることも多く、不快なケースもあります。
勤務中にも起こり得るセクハラ
セクハラは飲み会の場だけなく、勤務中でもあり得ます。
パトカーでの警ら中は、2人きりになる機会が多いです。上司や先輩との警らが最も多いですが、立場が上の人には逆らえませんし、否定もできません。
会話を盛り上げようとしてくれる人もいますが、誤った距離感になる人もいます。
仕事中、上司は相棒になるわけですから、不適切な発言があってもその場は笑ってやり過ごします。しかしこのようにストレスが積み重なっていくと、どんどん精神的に追い込まれていきます。
なぜ我慢してしまうのか?若手女性警察官の本音

セクハラに悩んでいる女性警察官が相談しようと思っても、その一歩を踏み出すのは簡単ではありません。
特に若手の場合は「異動で飛ばされるかも」「希望の部署に配属してもらえないかも」と考え込むこともあります。
また組織内の力関係や周囲の目を気にしてしまい、声を上げにくくなりがちです。
上下関係の強い組織で声を出しづらい
警察は階級社会であり、上司や先輩などの縦の関係が強い職場です。
そのため、不適切な言動があったとしても、相手が自分より上の階級であったり、先輩であった場合「評価に響くかもしれない」「悪い噂を流されるかもしれない」と不安になります。
特に新人のうちは、せっかく頑張って警察官になったんだから人間関係をこじらせたくないという思いや、新しい仕事を覚えるのに精一杯で相談できない状態になりがちです。
人間関係悪化を恐れてスルーしてしまう
同じ職場で働いている限り、人付き合いはしなければなりません。
多くの人は「波風立てて、関係を悪化させたくない」と思っています。
また異動まで耐えきればそれでいいと考える人も多いです。これはセクハラだけに限らず、パワハラなどにも当てはまりますが、この職場で1年だけ我慢すれば離れられると思い、相談しない人もいます。
しかし確実に異動できる保証はありませんし、その前に精神的に追い詰められることもあるので、耐え続けることはおすすめできません。
「自分が気にしすぎ?」と思ってしまう心理状態
セクハラの定義は難しく、どこまでが許容範囲でどこからがアウトなのか、非常に曖昧です。
不適切な発言があっても、周囲が笑って流してしまうと「これは自分が気にしすぎているだけなのかな?」と思ってしまいます。
しかし自分が違和感を感じている時点で、その発言は問題があったということです。
そして意外と周囲の人間も、その場はスルーしていても「それはアウトじゃない?」と内心思っていることもあるので、相談してみると良いでしょう。
現状は変化してきている|相談体制と処分の現状

最近では警察組織もセクハラの意識が高まっており、相談体制の構築や処分の厳格化が進んでいます。
「昔はこれくらい普通だった」という風潮が通用しなくなってきているのです。
相談体制の充実
近年、ハラスメント対策として各都道府県で相談窓口が設置され、相談しやすい体制が構築されています。
私が勤めていた県でも「ハラスメント相談窓口」や「匿名の通報メールフォーム」が設置されていました。
また、外部の相談窓口もあるほか、女性の相談員が配置されているところもあるなど、相談しやすい体制ができてきています。
それらの相談窓口からハラスメントが発覚した、処分されたなどの例も少なくありません。
処分事例が増えてきている現実
何年も前からハラスメント防止対策を講じてきたはずですが、セクハラ発言で処分を受ける警察官は年々増加しています。
やはり多いのが飲み会の場での不適切発言です。
町田警察署長 女性署員にセクハラ発言で警視総監注意受け辞職https://t.co/JPXdC7xb7N #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) August 19, 2025
処分するということは、つまり、組織として「セクハラを放置しない」という方向が明確になったということです。
我慢しないためにできること
「嫌だ」「不快だ」と思ったら、その気持ちを無視してはいけません。自分がそのように思ったということは、他の人も同じ思いを持っている可能性が高いです。
まずは身近な人に相談する
いきなり窓口に相談するのはハードルが高いと思います。まずは信頼できる同期や先輩に話をしてみると良いでしょう。
相談することで、自分の感じた違和感や不快感が正しい感覚だったかどうかを確認できます。
また、先輩方はいろいろな経験をしています。第三者の立場からのアドバイスを参考にしてみてください。
相談窓口を活用する
もしも、
- 身近な人には知られたくない
- 身近な人に相談しても解決しなかった
- 匿名で相談したい
と思った人は、相談窓口の活用をおすすめします。
公式な相談をすると記録が残り、組織として動きやすくなります。必要に応じて、配置転換などの対応ができるので、自分の見を守るための行動をしましょう。
一人で抱え込まないための心構え
心構えとして、
- 悪いのは相手である
- 違和感を無視しない
というのが重要です。
我慢し続けると精神的に疲弊して、病気になるかもしれません。
元女性警察官からのメッセージ

私は13年間の警察官人生でさまざまな現場を経験し、いろいろな人と関わってきました。
飲み会の席では何度もセクハラを目撃しています。今後の人間関係を考えると、なかなか言い出しづらいのはよくわかります。
しかし、声を上げることはわがままでも、空気が読めないわけでもありません。
これからも多くの後輩たちが現場に出てきます。自分のためにも、後輩たちのためにも、安心して働ける環境を作っていきましょう。




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