中居正広氏による性暴力の件、元女性刑事が解説!

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中居正広氏による元フジテレビ女性アナウンサーに対する性暴力の件について、性犯罪事件を扱っていた元女性刑事の私が解説してみました!

中居正広氏による性暴力事件

性暴力といってもいろいろな種類がありますが、今回の件は不同意性交等罪に関係してきます。

不同意性交等罪などの性犯罪については、↓を参照してください。

ラインやSMSでのメッセージのやり取りも公開されていますが、中居さんの言動からは、2人きりになることを狙っていたのでは?と想像できます。

2人きりの現場で何が行われたのかはわかりませんが、元フジテレビ女性アナウンサーが精神病院に入るほどのPTSDを患っていることを考えれば、どのような被害を受けたのか想像がつきますね。

元女性刑事からの視点

フジテレビが今回の件を調査した結果、性暴力であったと認めました。

報道を見た視聴者などからは、中居氏は逮捕されるべきではないかという意見も出ています。

では、なぜ警察が動かないのかについて考えてみます。

・発生から日数が経っている 2023年の夏の出来事
・元フジテレビ女性アナウンサーが警察に届け出ていない
・証拠が乏しい

などの理由が考えられます。

詳しく解説!

発生から日数が経っている

発生は、2023年の夏
既に1年以上が経過しています。

警察の事件捜査では、
・犯罪の発生日時と場所
・被害者の供述
・防犯カメラや指紋、DNAなどの客観的証拠
・○○が犯人であると特定した理由
が絶対に必要なのです。

例えば、ホテルなどで被害に遭った場合、警察は宿帳や防犯カメラを捜査して、発生した日時と場所を特定します。

発生した日から日数が経てば経つほど人間の記憶は曖昧になるので、なぜその日に被害に遭ったと言えるのか、根拠があることが大切なのです。
中居氏の件だと、ラインやSMSでのやり取りが残っているので重要な証拠になります。

警察に届け出ていない

今回の件、元フジテレビ女性アナウンサーの方が、警察には届け出ていないと発表しています。

今回のような性犯罪事件を捜査するためには、被害者の供述が絶対に必要です。

被害届がなくても捜査はできますが、当事者でなければわからないことばかり。

中居氏の話を聞けばいいだけじゃないかと思われるかもしれませんが、犯人というのは自分に都合のいいことしか話しません。

性犯罪であれば、

・女性が嫌がっているようには見えなかった
・イヤよイヤよも好きのうち
・男の自宅や一緒に
ホテルに行くのは合意しているから

という言い訳が多いです。

このような言い訳を否定するには、被害者からの供述がないと難しいです。

被害者が絶対に警察に言わないで欲しいという要望があった場合は別ですが、病院が警察に連絡することで被害が発覚することも多くあります。

証拠が乏しい

性犯罪の場合、被害者の身体に犯人の証拠となるDNAが付着していることが多いです。

重要な証拠になってくるのは、
・被害者の性器や肛門に裂傷などのケガがあるか
・被害者の性器に犯人のDNAが付着しているか
・膣内や肛門内から精液が検出されるか
・身体に暴力の痕跡があるか
・胸に唾液などのDNAが付着しているか
・口腔内に精液があるか

です。

性器や肛門などの部位は病院の先生が診察、資料採取をしてくれます。

DNAというのは劣化しやすいものなので、事件が発覚したらすぐに採取します。
裁判で使える証拠資料にするためには、細心の注意が必要です。
裁判で使える資料かどうかはすごく大切で、ここに不備があると、犯人の弁護士から証拠能力がないと言われてしまいます。

中居氏の件では、発生から1年以上が経過しているので、身体に残された証拠は少ないと思われます。

しかし、病院のカルテには膣や肛門のケガの状態、身体のアザなどが記載されているはずなので、これらは証拠資料になります。
病院の先生の供述内容も重要ですね。

最も重要なポイント

今回の件で最も重要なポイントは、「被害者が捜査に協力的になれないこと」です。

被害者ではないかと言われている元フジテレビ女性アナウンサーの方は、インタビューで

警察に被害届を出すことも考えました。でもそうなると、現場に立ち会って自分がされたことを再現しなくてはいけません。
当時は現場に近づくことはおろか、自分の身に起きた出来事を、心から信頼している人以外に口にすることは無理で……。こんな状態では何も説明できないと思い、悩んだ末に出さないことにしました。警察へ行って、さらに心を傷つけられることへの怖さもありました。」

渡邊渚「PTSDになった人でも笑えるようになることを、証明し続ける人間でいたい」|FRaU

と話されています。

この発言から、2次被害を恐れていることがわかります。

性犯罪事件の捜査では、被害者に現場を教えてもらう必要があります。
被害者が、「犯人の家です。」と言っても、刑事も検事も裁判官もそれがどの家なのかわからないからです。

ただ、現場で被害状況を再現してもらうことはめったにありません。
犯人の家に入って再現する訳にはいかないので、警察署内で模擬現場を作って再現を行います。

私は何度も性犯罪事件に携わっていますが、被害者に現場で再現をしてもらったことは1度だけ。それも被害者の自宅が現場だったときだけです。

被害を再現するのはとてもツライもの。

どのような体制で、どのようなことをされたのか、全て写真で記録します。
写真に被害者の顔が写ることはありませんが、もう一度、被害当時を思い出さなければならないのです。

まとめ

性犯罪の捜査は被害者の負担がとても大きいです。

警察の捜査では、最低でも
・事情聴取
・供述調書の作成
・被害者の身体からの証拠収集
・病院の付き添い
・実況見分
・再現見分
・被害者のスマホの確認
が行われます。

他にも、検事の取調べもありますし、裁判になれば出廷しなければならないことも。
出廷の際には、遮蔽版やビデオ通話など顔を出さない方法を取ってくれますが、心理的な負担は計り知れません。

おそらく、元フジテレビ女性アナウンサーの方は、これらの捜査が耐えられないと判断して、警察に届け出はしなかったのだと思います。

不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は親告罪ではないので、事件捜査はできますが、やはり被害者の協力は不可欠。
もっと被害者の負担が減るような司法制度になるといいですね。

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