元刑事が語る一番ツライ現場は何?

警察関連

警察官として一番ツライ現場はなんだと思いますか?

私の答えは、「列車飛び込み自殺」の現場です。

バラバラになった遺体を見るから?

違います。一番ツライのは、「遺族対応」なのです。

ツライ現場って?

列車飛び込み自殺とは?

列車飛び込み自殺とは、文字どおり走ってくる列車に自分から飛び込む「人身事故」ことです。

列車の人身事故は、年間約700〜800件程度だと言われています。

都会は列車が発達しているので、人身事故の発生は多いでしょう。

列車の人身事故は、遅延するので他の乗客に迷惑がかかります。

そして何より、列車の運転手さんが一番かわいそうに思います。

目の前に飛び込まれても、止まるに止まれませんからね。

実際の現場

私が勤めていたのは田舎の方なので、車移動が主流です。
列車での人身事故はそう多くありません。

刑事のとき、何度か列車事故を取り扱ったので、私の思いを書いてみました。

以下、グロテスクな表現があるのでご注意ください。

現場に着いてまず目に入ったのは、人間の頭部です。

髪の毛と目鼻口があるあるから頭だとわかりましたが、眼球は破裂しているし、歯は砕かれているので、まるでマスクのようでした。

そして線路の数百メートルに渡って、体の一部が「バラバラ」に散乱しているのです。

頭蓋骨も粉砕されるので、脳みそが飛び散っています。

四肢は車輪に轢かれてバラバラ。

胴体は捻じ切れて腸が飛び出しています。

そんな体の一部をできる限り集めて、署に持ち帰って検視を行います。

検視をしている最中、血の匂いや列車の車輪についている油の匂いなどが検視室に充満して気分が悪くなったことを覚えています。

残念なことに、列車に飛び込むのは10代の若者が多い印象です。

簡単に死ぬことができると思うからなのか、多くの人に迷惑をかけたいという思いなのかはかわりませんが、いたたまれません。

列車にぶつかって即死というより、失血または体幹が切断されたことによる損傷死、ショック死という検視結果が多かったように思います。

簡単に死ねたとは思えません

遺族対応

検視と同時並行で、ご遺体の持ち物を調べます。

所持品から、ご遺体はこの人かな?という人物がわかれば、家族に連絡します。

家族が署に到着すると、親子鑑定に必要なDNAの採取や家庭環境、普段の生活などを聴取します。

聴取している段階で号泣しているお母さんや実感がないと言って淡々と聴取に応じるお母さんもいました。

ご家族の前で一緒に泣くこともできないし、むしろ虐待などがなかったかどうかを判断しなければなりません。

私は、親御さんから話を聞くことが一番つらかった。

ご家族の中には、警察に子どもが死んだと聞かされて、DNAで子どもに間違いないと言われても納得できないから、遺体の顔を見せて欲しいというご遺族もいます。

私の勤めていた県では、基本的にご家族にご遺体を見せることはしません。

見ても顔がわかりませんし、その姿が脳にこびりついて二度と忘れられなくなってしまうのです。

私のように無関係な人間ですら、今でもご遺体の顔をはっきりと覚えています

ご遺体は見ない方がいいと説明しても、どうしても見たいというご遺族がいました。

とてもじゃないけれど、顔は見せられる状態ではなかったので、比較的損傷の少ない胴体の一部だけを見せようということになり、先輩刑事と共に、血まみれのご遺体を拭き上げて、毛布をかけてあげました。

結局、納体袋越しのご対面となりましたが、お父さんとお母さんは膝から崩れ落ちて、納体袋にしがみ付いて号泣されました

私はその様子を見て、涙を堪えるのに必死でした。あの場面は忘れられません。

DNA鑑定というのは、ドラマのようにすぐに結果が出るものではありません。

一番早く鑑定して欲しいと科捜研に依頼しても、結果が出るのは翌日です。

ご遺族はその間、どのような気持ちで鑑定結果が出るのを待っているのでしょうか。

・何かの間違いであって欲しい
・DNA鑑定の結果、うちの子じゃなかった

と祈っているでしょう。

残念ながら、祈りが届いたことはありません。

刑事として、年間何十人というご遺体を取り扱ってきて、検視や解剖には慣れてしまいました。

それでも遺族対応に慣れることはありません。

うつ病を患った身としては、死んでしまいたい気持ちもわかります。

それでも、残された遺族を見てきた私は、やはり死んでほしくないと思うのです。

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